建物をまっすぐに
前回に続きTS35mm/F2.8 S.S.Cについて。ティルトに続いて今回はシフト。
シフト(Shift)は、ティルト(Tilt)より知られていないかもしれない。でもこのレンズ、元もとはシフト用途で使われることが多かったのではないか。
レンズをずらす(シフトする)ことにより、ずれた片側が拡大される(その結果、パースを変えられる)。これで先細に写るビルをまっすぐにできる。逆にずらせば先細を強調することも可能だ。
こんな写真はどこで必要になるのか? おそらくカタログやパンフレットに載せる建物の写真などだろう。これらに載せる建築物の全景写真を撮る場合、必須の道具だったはずだ。
シフトとティルトの両方の効果をかけることもできる。奥行きのあるものの大きさを合わせると同時に、ピントもコントロールするのだ。
下のTilt+Shiftでは、シフトで下側を拡大、ティルトで真ん中のボトルにピントを合わせている。水平方向にピントを合わせられないのは、ティルトとシフトのずれる方向が交差している(90度になっている)からだ。キヤノンのサービスでは、これを同じ方向にずれるようにする改造を請け負っていたようだ。実際同時に使う場面を考えると、そちらのほうが良いような気がする。
とても興味深いシフトとティルトだが、現在はPhotoshopなどの画像処理ソフトで同様の効果を出すことができる。今となってはそちらを使う人がほとんどだ。だから、以前ほどは重宝されなくなっているのではないだろうか?
New FISH-EYE 7.5mm/F5.6と同じく、このレンズも絞込測光。裏側に絞り連動ピンはない。ボディ側の開口部は非常に大きい。シフト、ティルトによりずれた光がフィルムに届くようにするためなのか。
ネジが出っ張っているためケースは大きい。ケース内には、付属の三脚用の台座(写真右)の収納スペースもある。この台座、三脚を使って撮るときに、シフト、ティルトでレンズが三脚台座に当たらないようにするためのものだ。
それにしても難しい。狙った効果が出るかどうかが、普通の写真以上に分からない。ティルトの場合、スプリットのずれを使わず目だけでピントを合わせる必要があるが、目の悪くなってきた五十代には辛い。シフトは建物の稜線が平行か、建物自体が真っ直ぐかなどを気にしなくてはならない。
建物の写真を撮ることは多いけれど、カタログ写真的な全景を撮ることはほとんどない。変わった効果を出したいときには重宝するのだろうが、わざわざ持ち出すかどうかは疑問だ。気を付けないと、ネジを曲げてしまうという心配もある。やはり出番は増えないレンズになりそうだ。
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