BOY A ★★★★☆
観た次の日まで余韻が残る。それぐらいのインパクトがあった。
10歳前後で友人と二人で少女を殺すという大罪を犯し、成人し更正して世に出てきた青年。その心の動き、躊躇などを緻密に伝える。下をうつむきかげんで、はにかみ消極的、でも世に出て働き、周りとの関係を築き、友と遊び、恋人ができる大きな喜び。これをうまく伝える演技と演出の力を感じる。その周りとの関係、彼女との関係などの大切さが強調されるからこそ、彼の正体がばれて、それらが失われたことの痛手の大きさが観るものの心を打つ。
映像的には、クローズアップに近いぐらいで会話する二人を前後に捉えるシーンが印象的。その配置も左右片方を完全に開けた構図が多い。
演技陣は、主演ジャックのアンドリュー・ガーフィールド、ミシェル役のケイティ・リオンズ、カウンセラーのピーター・ミュラン、その子、皆好演。主演のアンドリュー・ガーフィールドのはにかみがちで内気な演技は地と思うくらい決まっている。ケイティ・リオンズは、彼女を語る男たちの「白鯨」というあだ名のとおり少しファットな感じだが、非常に魅力的。
ここまで誉めながらもちょっと残念なのは、締め方、エンディングにある。彼の自死を暗示するかたちにもっていくことは理解できるのだが、同じ結末にしても、もう少しちがう表現があったのではないか。また波止場でミシェルに会うというのもあまりにも偶然、唐突で、一瞬、彼の想像の中かと思ってしまう。
少年犯罪、更正、出所後の処遇などについては考えさせられることが多い。日本では酒鬼薔薇事件があり、彼の社会復帰にあたり父親の手記が公開されていた。その手記にあった(と記憶しているが)、彼にも社会の中に居場所は必要だと思う。今の日本では少年犯罪は更正をベースに考えているのだから…。確かに、少年時に重大事件を起こし再犯を重ねる例は、「大阪姉妹殺害事件」「女子高生コンクリート詰め殺人事件」などありはするが…。
ただ、同時に被害者の権利がないがしろにされている問題もある。この映画の中でも、彼らの殺人の場面は、残虐なところは描写されない。映画という枠はあるにしろ、そこはどうなのかとも思う。
ロルナの祈り ★★★★☆
ロルナの葛藤、心の動き、想像妊娠でも妊娠したと思わずにいられない良心、彼女を抹殺しようとする仲間。その顛末がどうなるのかと観るものをどきどきさせながら、曖昧かつ一応納得できる締めにもってきたところが上手い。
【GPS情報】
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