映画:落語娘/歓喜の歌
「落語娘」は中原俊監督作品ということで、溜まっている仕事は明日以降に回して映画館にやってくる。
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落語娘 ★★★★☆
ぐうたら師匠の下に弟子入りし、修行する若手女噺家。師匠は遊び呆けて稽古もつけてくれないし、弟子にお金を借りに来る始末。寄席の楽屋では女性ということで粗末な扱いをうける。そんななか師匠は、演じた噺家は必ず死ぬという曰く付きの禁断の演目を、40年ぶりに高座にかけることになり…。
うなるほどの感動などはないけれど、退屈はせず話に引き込まれる。落語界の女性の立場や下っ端の辛さなども伝わってくるし、妙ちきりんな設定の呪われた話についても前振りが上手いのか、違和感なく受け入れられる。とにかく巧妙さと円熟を感じるシナリオ、演出。カメラ、カットもそつがない。
演技陣も好演。主人公のミムラ、師匠の津川雅彦、古典の大家役の益岡徹、三人とも印象に残る。ただ、演出によって最大限の魅力を引き出されている感じがする。
歓喜の歌 ★★★★★
大晦日の夜、文化会館の合唱コンサートの予約がオーバーブッキングになる。それをなんとかしようという文化会館の職員の動き、二つの女性コーラス隊の人々、その家族などの二日間を描いていく。
いやー、笑った笑った。劇場内でもかなり受けていたと思う。その笑いの大部分は、文化会館の主任役の小林薫の熱演に負うところが大きい。無責任でやる気のない小役人、でも憎めない人柄という微妙な役柄を見事に演じている。
十分笑って楽しめる作品なのだが、ストーリーもしっかりしている。予定調和的な展開とエンディングではあるが、それが予想できても十二分に楽しめる。そしてストーリーの中には、相手のミスに対する態度や、現代版「生きる」のようなテーマ、家族との関係などいろいろなものを適度に織り込んでいる。若干浮いたエピソード、あまりにご都合主義の成り行きもあるが、それが霞んでしまうぐらいのパワー。演技、シナリオ、演出などがうまく噛み合っている。演技陣では、小林薫は特別だが、安田成美、他の面々も好演。大好きな光石研は、この映画ではちょっと外した感じ。
「デトロイト・メタル・シティ」の評価が低く、この映画の評価が高いのには、このようなコーラスについてほとんど知らないことがあると思う。「デトロイト~」はメタルとはいえどもロック。優劣、良い悪い、スピリッツのあるなしの判断は付く。でもこの分野については完全に門外漢なので、合唱の美しさに素人として素直に感動してしまう。その中でも、テストを受ける舞台での平澤由美のソロのすごさに、この映画の中で一番感銘を受ける。
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