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2008/07/28

3年で辞めた若者はどこへ行ったのか アウトサイダーの時代

3年で辞めた若者はどこへ行ったのか アウトサイダーの時代
多くの体験談を紹介し、それを集めてパッチワーク的に構成しているのかと思ったら、後半にはそれを凌駕する力があった。特に最後のコラム「格差のなくし方」は、これだけでこの本を読むに値する。

非正規雇用の拡大による果実が年功序列の中高年齢高所得正社員のベアにつながっており、世代間の利害対立が存在する。それに対して既存の左派・労働運動が無力であった、という指摘は非常に興味深い。既得権をもつ高所得の中高年齢層の所得の再配分が必要というのも説得力を持つ。年功序列の廃止、職務給の導入も分かる。しかし、それだけでは解決しない。労働分配率の維持、働き子育てをする親(男女)が有利になる政策、などが重要と感じる。

ただ誉められる点だけではなく、読むにあたっての注意も必要。

・すべてを昭和的価値観と平成的価値観に二分し、前者を「悪」とする単純化に潜む危険性。
・P145の『現在の日本において、改革はすべての局面において必要だ。それに対する反対は、基本的に既得権益者の抵抗とみなして問題ない。』という一節(この後『ただ、~』と例外の話は続くのだが)。このような極端な単純化が見受けられること。
・また改革の名の下に行われてきた切り捨てが、彼の主張する改革にも紛れ込んでくる可能性が大きいこともある。

他にも、大都市と地方の格差・利害対立についてほとんどスルーしているところも片手落ちに思える。読みやすさと重要な主張の裏に隠れている罠と毒にも気をつけなくてはいけない。

※本に書いてあったことではなく、私個人の考えだが…。

・所得の再配分は既得権(年功序列による高所得)の放棄だけでは抵抗も多く、成功しにくい。所得税率の累進性を上げることと組み合わせるべきでは。
・法人税率も高めるべき。
・非正規雇用の制限と労働条件の改善が重要。
・外国人の労働条件の改善(日本人と同一の労働条件)が重要。ここが上がれば日本人の労働条件も上がる。
・公務員、公的サービス、ヒモ付き関連団体の徹底的な効率化を図る。採用、退職の流動化を図る。退職後の処遇改善を図った上で天下りを全面禁止する。(←具体案とアイデア不足)
・その上で、増えた税収を若年層の処遇改善、育児支援、セーフティーネットの拡充、エネルギー・バイオなどの革新技術の振興に集中的に割り当てる。
・円安維持の政策。

というのが思いつくところ。

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