映画:1900年
堂々5時間16分の超大作。途中休憩も入る。
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★★★★☆
1900年に生まれたイタリアの農場主の子と貧農の子を軸に、1945年までを描いた一大叙事詩。
搾取の厳しい農奴同然で働かされる時代から社会主義運動、農場主の援助で生まれたファシストたちの台頭までが第1部。そこから、ファシストの横暴の時代、戦争が終わりファシストや農場主たちが農民たちに弾劾されるところまでが第2部。
なんと言っても、アダを演じたドミニク・サンダが強烈な印象を残した。美しく、美しく、エキセントリックで美しく…。あまりに強烈なため、アルフレードとの破局が、とてつもなく悲劇的な印象を与える。ドミニク・サンダってすごい。「暗殺の森」もどこかで観なくては。
作品全体、オーソドックスに丹念にシーン、カットを積み上げている。絵的にすばらしく感銘は受けるところが多いわけではないが、結婚式の直後にアダが朝霧のなか白馬を乗り回し、オルモに出会う田園風景の美しさ(そしてその直後に悲劇が待っている)。戦争が終わり貧農の女性たちがファシストのアッティラを追い回す場面などは印象に残る。
シナリオも巧妙。猥雑なものセックスに関するもの描き方がリアルだけど嫌味にならない。終わりかたもお上手。広場で殴り合うアルフレードとオルモのシーンの直後に、殴り合う老人二人。年老いた二人とは一瞬分からなかった。その後の幕切れも心に残る。あと、アッティラに殺される少年の名が(おそらく)愛国心に近い名前であるパトリッツィオであるのが印象的。
ベルナルド・ベルトルッチの作品は「暗殺のオペラ」以来(他は観ていないと思う)。この作品も「暗殺のオペラ」も、戦前イタリアで時代に翻弄された人々の業をしっかり描いている感じで好感がもてる。
※オルモを演じたジェラール・ドパルデューって、「あるいは裏切りという名の犬」の敵役クランを演じていた俳優だったのか。驚いた。この「1900年」での共演の縁で、デ・ニーロの力で「あるいは裏切りという名の犬」がハリウッドでリメイクされるという話も進んでいるみたい。
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コメント
こんにちは。無事に自転車に乗られている様でなによりです。
それはともかくベルトルッチ!僕は『暗殺の森』と『ラストタンゴ・イン・パリ』が人生の10本の内の二本、という人なので、思わず書き込みさせて頂きます。
でもこの『1900年』はかなり昔に一度観たきりで、ともかくその長さにやられてしまい、あまり印象に残っていないのが残念です。でもドパルデューの若さ(痩せてる!)やデ・ニーロの魅力、そして何よりもやっぱりドミニク・サンダの妖艶さにまいります。また機会あったら映画館で観直したいものです。
『天然コケッコー』も去年の映画ではかなり好きで、山下監督がこんな映画も撮れるのか?と感心しました。これは原作も買ってかなりお気に入りです。
それにしても最近は寒くて自転車もかなり辛い毎日です。
投稿: IMAO | 2008/01/27 22:20
ありがとうございます。なんとか乗ってはいるのですが、体力が落ちてどうしようもないです。その上、去年までからは考えられないことに寒いのが嫌で乗れません。その分、他のことに使う時間が多いのは嬉しいのですが。
「暗殺の森」はとにかく観たいです。でもDVDをほとんど観ない私にとっては、配給会社の意向とか数少ない名画座のプログラムしだいなのでいつ見ることができるのか。「ラストタンゴ・イン・パリ」はさらに難易度が高そうです。それにしても、ベルトルッチの撮っている作品は不思議な感じがします。「暗殺の森」、「暗殺のオペラ」、「1900年」あたりは一つの筋が通っているけど、、、「ラストタンゴ・イン・パリ」、「ラスト・エンペラー」とか「シェルタリング・スカイ」、運命的な物語が多いところはあるにしろ、なんか理解できない変節にも思えます。
ドミニク・サンダと、ロバート・デ・ニーロ、ジェラール・ドパルデューのその後の出演作品をみると、大成した二人と比べドミニク・サンダは成功していない感じがしますね。でもこの作品の中での輝きには、完全に幻惑されてしまいました。とにかく「1900年」より前の出演作品を観なくては、、、となるとDVDしかないんですよね。
「天然コケッコー」は、ここを押せば感動するという自分のツボを完璧に押されてしまった映画でした。まいりました。
投稿: ひゅ~ず | 2008/01/27 23:48