映画:unknown/カポーティ
久々に映画館に。映画館通いも復活できるだろうか。
ちょっとやるべきことも多いので去年の最盛期ほどは無理だろうけど。
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unknown/アンノウン ★★☆☆☆
異常な状況の中、倉庫で目覚めた5人の男。5人とも記憶をなくしている。数少ない残る情報から、3人は誘拐犯で2人は人質であるらしい。自分は犯人なのか被害者なのか。疑心暗鬼の中、倉庫からの脱出の試みが始まる。徐々に戻る記憶、身代金を奪った犯人の仲間たちも戻ってくる。
シナリオというかアイデアが秀逸。最後のどんでん返しも意外性がある。ただこの面白い話を料理しきれていない。演出と編集(カット)が成功していない。
布石の入れ方、どんでん返しの見せ方、記憶の戻る瞬間、フラッシュバックのところをもっと巧くすればもっともっと面白い作品になったのに。そういう意味でとてももったいない作品。演技、映像も特に印象に残るところはない。あと中盤にちょっとなかだるみを感じる。巧く創れば「サブウェイ・パニック」みたいなサスペンス映画の傑作にできたと思うのだけど。残念。
カポーティ ★★★★☆
「冷血」執筆時期のカポーティ、そして犯人のペリー・スミスとのやりとりを描く。
「冷血」を読んだのは二十台後半かな。その記憶とだいぶ違う感じがあった。まず、犯行から逮捕までがたったの一カ月半であったこと。記憶では一、二年後と思っていた。そして逆に逮捕から処刑までがこんなに長いとは。カポーティの私生活についての知識もなかったのだが、彼がゲイとして描かれていたことにも驚く。
映画全体は非常に高いレベルの出来。主演のフィリップ・シーモア・ホフマンはいろいろな主演男優賞を総なめしたことに値する好演。他も標準以上の演技。映像やカットのつなぎも見事だ。カンサスの広大な畑、たたずむ農家を格好良く、美しく捉えている。監房の中での二人のやりとりも巧い。密室の中での二人だけの会話を、カットの切り換え、クローズアップの効果的な使い方で緊張感あふれるものにしている。
カポーティが途中から(それとも最初からなのかな)、犯人たちを救うことよりも自分の置かれたデッドロック状態から抜け出すことを中心に考えるようになったのは意外だった。「冷血」からはそのようなものは感じられなかった。そして迎えた結末。観る人が見たいような満足感を与えるエンディングではない。終盤のカポーティの苦悩についての説明も解決もない。観る者が自分自身で考え、感じるように創ってある。そして単純に満足させるエンディングでないからこそ、ある種の余韻が残る。このあたりのさじ加減は絶妙だ。娯楽作品としても、それを超えた普遍性を残すところでも一流の作品だと思う。
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コメント
映画復活おめでとうございます。
カポーティが凡人になる瞬間、カポーティが映画の試写会のあと、弟子に感想を求められたとき、いつもの軽口を叩けなくなってしまう場面はショックでした。
投稿: 御木 | 2007/02/22 21:26
なんとかいろいろなものを復活しつつあります。映画もしっかり継続的に観ていきたいです。
カポーティの軽快さがなくなっていくところは演技だけでなく、カメラ、演出によるところが大きいですね。試写会での一人飲んでいるシーンもライトの効果が大きかった気がします。
最後のほうで、カポーティが異様に老けた感じがしたのですが、後から考えると、顔や髪の毛の部分アップとかライトとかの力でしょうか。
御木さんがブログに書いていたカメラのシャッター音といい、細かなディテールに非常に凝った映画でした。
投稿: ひゅ~ず | 2007/02/22 23:06