チェチェン やめられない戦争
読了。アンナ・ポリトコフスカヤの著作。邦訳されているのはプーチニズムとこれだけ。
戦争の目的と背景、その中で生きるチェチェンの人々の現実、攻めているロシア側の実像などが、彼女の目と批評をとおして描かれる。
ロシア軍部、プーチン、チェチェン側で利益を受けている層という構図が崩れないかぎりこの戦争は終わらないのだろう。それが崩れるのは、ロシア側に対する徹底的な打撃があるか、西側の圧力しかないと思う。
ポリトコフスカヤの文章には人間と現状に対する絶望と、それではいけないという強い意志が共存している。そして、これは翻訳者の力にもよるのかもしれないけど、このような内容としては意外なほどリズムがあって美しい。
※巻末に「論考」としてアメリカの大学助教授が寄稿している「何が真実か?」という文章が秀逸。ポリトコフスカヤの文章の真実性についての捉え方と、この戦争の歴史的背景が短く分かりやすくまとまっている。これがこの本の価値をさらに高めている。
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