映画:フラワーズ・オブ・シャンハイ/HHH 侯孝賢
本日もシネマヴェーラで侯孝賢特集。「フラワーズ・オブ・シャンハイ」、「HHH:侯孝賢」の2本。共に初見だが、後者は記録映画。この2本の間にトークショーがあるが、先週みたいにつまらかったらどうしよう。
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フラワーズ・オブ・シャンハイ
1880年代、高級官僚や金持ちが顧客の上海の高級娼館。そこの遊女と男たちの物語。
このフィルムは一般公開バージョンとは異なるカンヌ映画祭上映バージョンらしく、5分ほど長い。フィルムセンター所蔵のものとのこと。
顔を見分けるのが不得意なのもあるけど、人の区別、特に主人公の三人の女性の区別が付きにくい。似た服装、似た髪形、似た娼館で、話を追い切れない。映画の最後のシーンも、小花が役者と阿片を吸いながら寛いでシーンとは思わず、別なカップルと勘違いしていた(このことは、後のトークショーで分かった)。
ミレニアム・マンボほどではないけど、似たような印象を感じる。完璧な演出、完璧な映像、完璧な演技、煮えきらないストーリー。うーん、悪くはなかったけど、、、「悪くはなかった」程度の作品かな。
娼館を扱った溝口健二の「赤線地帯」では、女性陣の見た目も明らかに違うし、描き分けも明確だった。侯孝賢の映画は自然な設定、自然な演技を重視していて、説明的なセリフを一切排除している。だから登場人物の背景も、性格も分かりにくい。1回観ただけでは理解できないストーリーでは、良いとは思えない。
俳優陣では、トニー・レオンが良い。でも、ガオ・ジェがさらに好印象。彼は、観ればみるほど良く思えてくる俳優。かなり好きになってしまった。女優では、小花を演じた羽田美知子がなかなか良かった。
映像的には完璧。「春の惑い」での妹の誕生日での晩餐のような、演技と照明、撮影が完璧に絡み合ったシーンの連続だった。場面を舐めるようにゆっくりと動かすカメラ。しかし、トークショーで分かったことだが、計算をされたものではなく、ほとんどアドリブ、即興に近い演技と、それに対応したカメラの動きだったようだ。これには驚いた。繰り返し撮った中から良いテイクを選んだとしても、あれほどのものが作れるなんて、すごいの一言。
HHH 侯孝賢
おそらくフランスで制作された侯孝賢の記録映画。彼とレポーターが台湾や中国本土のロケ現場を回りながら、インタビューに答える作り。とても興味深い内容だった。分かったことは、「冬冬の夏休み」は共同作業を行っているシナリオライターの体験、、、それどころか彼女の実家をロケ地にした作品であったこと。また、「風櫃の少年」のような体験が、侯孝賢自身の兵役前の生活感覚そのものであったこと、などかな。
★この日のトークショーは、「フラワーズ・オブ・シャンハイ」のプロデューサーの市山尚三、小花を演じた羽田美知子、映画評論家宇田川幸洋の三人。いやいやこれが面白かった。前回の漫然とした話とは違い、撮影現場での侯孝賢の姿、演出の仕方、その他裏話の数々。女優とプロデューサーの生き生きとした喋り。とても興味深く、かつ楽しかった。
その中でも面白かったのは、カンヌでの上映中、どんどん席を立つ音が聞こえて、その夜の侯孝賢はやはり暗かったこと。日本では3週間で打ち切られたこと。この映画のお陰で侯孝賢はかなりの借金を負ったこと。映画のなかの酒宴は、ほんもので酒も食べ物も実物。朝から酒を飲まなくてはならず辛かったこと。ガオ・ジェの料理は本当に美味しいこと。出来上がった作品を観るとシナリオがまったく役に立っていなかったこと。とにかく徹底的に自然な演技、いや演技というより振る舞いを要求することなどなど。読んでいたこともあるけど、それに出演したり、プロデュースした本人から聞くというのは、まったくちがうことだ。
↓この日は大混み。「フラワーズ・オブ・シャンハイ」は20人以上の立ち見が出る大入り。
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